オレフィン系熱可塑性多孔質プラスチック(スポンジモノリス)
スポンジモノリスについて
熱可塑性の汎用ポリマー(ポリエチレン・ポリ酢酸ビニル共重合体:EVA)から製造される多孔体材料をクロマトグラフィー用の新規媒体として利用する。本材料は今までクロマトグラフィー用の媒体としては用いられておらず、その通液性やユニークな分離特性等を活かしたアプリケーションへの適用が期待されます。EVAスポンジモノリの酢酸ビニル部分を加水分解することで、表面に水酸基を生成させ、化学修飾を行うことも可能です。
※4.6 x 100 mm サイズのカラムをモニター販売しておりますので,お問い合わせください.
主なスポンジモノリス
・ポリエチレン・ポリ酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量7-25%)
・上記スポンジモノリスの加水分解ポリマー
・ポリエチレン100%
・ポリスチレン
・ポリアミド 等
分離剤としての長所)
•高速通液可能な柔軟素材:通常10-50μmの大きな連通孔を持つ。
•低コスト:汎用材料であり、入手が容易でスケールアップにも対応しやすい。
•成形性に優れる:自由な形状に加工でき、カラム化が容易。(シート、ロール、ペレット状等)
•ハイブリッド化:樹脂内への機能性固体の固定化が可能。(粒子、繊維状高分子、カーボン等)
•表面修飾が可能:機能性リガンド、イオン交換基の導入が可能。
•大口径連通孔:巨大分子分離への応用。(タンパク精製、細胞分離、アフィニティー等)
•生体試料との相性が良い:不可逆吸着が少ない。
•立体選択性が高い:平面形状分子を優先的に保持する。
•柔軟性を活かした用途:試料のオンサイト濃縮・輸送や圧縮による強制溶出が可能。
短所)
•分離効率が低い:60-100μmのシリカ充てん剤に相当する性能。(低分子よりも高分子試料の分離に適する)
•使用制限:温度Max70℃まで、非水系溶媒に溶解する場合がある。(メタノール、アセトニトリル等は可)
•負荷量が小さい:表面積が小さく、メソポアをほとんど持たないため保持容量は小さい。(改善可能)
期待される応用、用途
逆相、イオン交換モードのタンパク分離用媒体としての応用が期待できます。特にタンパク精製用として、多用されている軟質多糖系ゲル充てん剤は分離時間が長く、費用も高価であるため、イオン交換やアフィニティー機能を持つスポンジモノリスは低価格・高通水性を保有した代用分離媒体となり得ます。また、スポンジモノリスをカートリッジ前処理カラムとすれば、既存のフラッシュシステムや自動分取装置での使用が可能であり、ユーザーは高速・低価格な分離システムを構築することが可能です。さらにスポンジモノリスはハイブリッド化(水に不溶の機能性材料を混練時に添加)によって負荷量の向上と選択性の付与が可能です。(例:カーボン粒子含浸スポンジモノリス、メタクリレートポリマー粒子含浸スポンジモノリス等)
アプリケーション
公表論文
1.疎水性粒子充てん剤の化学修飾による多次元化
Determination of bisphenol A with effective pretreatment medium using automated column-switching HPLC with fluorescence detection
Tetsuya Tanigawa, Yoshiyuki Watabe, Takuya Kubo, Ken Hosoya. J. Sep. Sci. 2011, 34, 2840–2846
Trace level determination of polycyclic aromatic hydrocarbons in river water with automated pretreatment HPLC
Yoshiyuki Watabe, Takuya Kubo, Tetsuya Tanigawa, Ken Hosoya, Koji Otsuka, Yoshihiro Hayakawa, J. Sep. Sci. 2013, 36, 1128–1134
2, 3. スポンジモノリス基材のクロマトグラフィー特性
Retention properties of macroporous spongy monolith and its application for concentration of polyaromatic hydrocarbons
Tetsuya Tanigawa, Keita Kato, Yoshiyuki Watabe, Takuya Kubo, Ken Hosoya. J. Sep. Sci. 2011, 34, 2193–2198
Specific Chromatographic Retentions on Polymer Pore Surface of Macroporous Spongy Monoliths
Tetsuya Tanigawa, Takuya Kubo, Ken Hosoya. Chem. Lett. 2012, 41, 12651266.
4.化学修飾によるスポンジモノリスの高機能化
Rapid separations by LC using ion-exchange media based on spongy monoliths
Takuya Kubo, Tetsuya Tanigawa, Yuichi Tominaga, Ken Hosoya, Koji Otsuka. J. Sep. Sci. 2013, 36, 2813–2818